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映画レビュー『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち(2020)』好きか、嫌いか。

 

1.作品情報

ヘルムート・ニュートンと12人の女たち
Helmut Newton - The Bad and the Beautiful
2020/ドイツ

 

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https://helmutnewton.ayapro.ne.jp/images/top_sp_bg.jpg

 

2.レビュー

 写真を見て、感想を求められる時、自身の語彙力の無さに嫌気がさす。好きか嫌いかならすぐ言えるのに。

 

 例えば好きな場合、それはモデルが美人だからかもしれないし、ライティングが洒落てるからかもしれない。モノクロがクールなのかもしれないし、構図が精緻なのかもしれない。専門的なことは分からないが、それらの要素のどこかに惹かれ、ぼくはその写真のことが好きなのだと思う。それらの要素のどこかに惹かれ、ぼくは写真を見ることが好きなのだと思う。

 

 一昨年、生誕100周年を迎えた、ヘルムート・ニュートン。彼のドキュメンタリー映画を見た。好きか嫌いか。自身の感情の確認に、映画館へ向かった。

 

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https://bt.imgix.net/magazine/22925/content/1603413306576_d149be2ffa9a9cf711e0f2d01c128c08.jpg?v=7&auto=format&fm=jpg&q=35&fit=clip&w=1200




 好きだった。

 

 

 モデルが、ライティングが、モノクロが、構図が、好きだった。そして何より、ヘルムート・ニュートン本人がとても魅力的なおじさまだったことに好感を持った。

 

 彼に撮られるモデルの多くは、服を着ていない。服を着ていないのに、いや、服を着ていないから、彼女たちは、誰よりも堂々とカメラの前に立っていた。シャーロット・ランプリングが、イザベラ・ロッセリーニが、マリアンヌ・フェイスフルが、グレイス・ジョーンズが、彼との思い出を楽しげに語り、彼を手放しで褒め称えた。それもそのはずだ。彼による彼女たちの写真を、彼女たちが撮られるさまを見て欲しい。

 


www.youtube.com

 

 ヘルムート・ニュートンは言う。

 

 「写真家にとって汚い言葉が2つある。一つは、”アート”。もう一つは”センスがいい”。」

 

 

 写真を見て、感想を求められる時、自身の語彙力の無さに嫌気がさす。好きか嫌いかならすぐ言えるのに。

 

 でも、これでよいのかもしれない。

 

 同時刻、鑑賞していたのはぼくを入れて5人だった。鑑賞後、パンフレットを買いに行ったら売り切れていた。「これはシンプルに発注の不足では?」という不満を押し殺し、駅へ下る坂へ向かった。下っている途中、ばったり昔の恋人に会った。お互いにさっきまで映画を見ていたことが分かり、「ポケモン?ねえねえポケモン?」と聞かれた。「ポケモンではない」と答えて、僕たちは別れた。2度目の別れだった。