『天国と地獄(1963)』からの学び
自粛生活はいかがでしょうか。
ぼくは仕事をしながら、いつも以上に映画に浸れる生活に、ほくほくしております(新潟にほくほく線というかわいい名称の路線がありますね)。
ですが一つ不満も。それは食事です。
自炊を頑張ってみたり、スーパーの惣菜を色々買ってみたり、スーパーを変えてみたり。
どれもとってもおいしいのですが、毎日決められた景色の中で選ぶ食材や料理に、シンプルに飽きてしまった感じがします(もちろん働いてくださっている方々には感謝しかございません)。
居酒屋が恋しいこの頃。
はやく好きなエリアに、飲みに行ける日が来たらいいですね。
さて本日はこちら。
『天国と地獄』
1963/日本
あらすじはこちら
エド・マクベインの原作を得て、黒澤明監督が映画化した全編息づまるサスペンス。製靴会社の専務権藤の息子と間違えられて、運転手の息子が誘拐された。要求された身代金は三千万円。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して三千万円を犯人に受け渡し、無事子供を救出する。非凡な知能犯の真の目的とは。鉄橋を利用した現金受け渡しのシーンは秀逸で、実際にこれを模倣した誘拐事件が発生した。また白黒作品であるにもかかわらず、最も重要なシーンで一個所のみ着色を施すなど新たな演出も印象深い。
引用元 映画.com
もうあらゆるところであらゆる人に語られてきたこの作品に、ぼくがわざわざ言うことはもはや何もないのですが。(本当に何もないと思います)
これまで観ていなかった後悔とあまりの傑作ぶりに、取り上げざるをえませんでした。
黒澤監督を代表する『羅生門』、『七人の侍』はもちろん観ました。ただ鑑賞時まだ若かったからでしょうか。たしかに最高に愉快な作品ではありましたが、白黒で時代劇で2時間越える作品となると満足感より疲労感が強く、なかなか次の作品に手が伸びなかったのが正直なところです。
『天国と地獄』も、ずっとずっと観ようと思っていながら、TSUTAYAで目が合っては、
「今日は気分じゃない」
「来週の方が時間取れるからその時に」
「ちょっと邦画はまた今度」
など、あらゆる言い訳を盾に、先延ばしにしておりました
でもきっかけは些細なものですね。
何というかこんな世界になってしまったということもあって、ディストピア系だったり、近未来SF系だったりが無性に観たくなって、Netflixで『AKIRA』を観たのです。
久しぶりに観た『AKIRA』の名作っぷりについてはここでは語りませんが、最高にほくほくした鑑賞後(またほくほく)、極めて単純に、アキラつながりで黒澤明さまを思い出しだ次第であります。
幸い今なら時間もあるし(まあいつもあったのですが)、いよいよ未見の黒澤作品に挑むかと決意をした時、Instagramで時々コミュニケーションで取っている素敵な方からタイムリーに『天国と地獄』を勧められたのでありました。きっかけをどうもありがとうございます。
さてこの作品は、夜に観ました。
夜風が涼しくなってきたにもかかわらず、手に汗どころか、鑑賞中、全身がじっとりと濡れているのがわかるのです。それぐらいの興奮度。
その日は母の日でした。映画のあるシーンではこんなセリフがありました。
「今日は母の日ですか?」
たまたま母の日に観たのも、きっと何かの縁でしょう。
無駄なシーンは一切なく(本当にない)、間延びすることも飽きさせることもないストーリー展開。文字通り目が離せませんでした。
余りにも有名であらゆる映画や世界に影響を与えてきた、一箇所のみ色を使用する演出や、特急電車での身代金引き渡しのシーン(なんと車両を貸し切っての一発撮り)には本当に興奮しました(もう自分の鼻息が見えました)。
これを観ずして、映画好きを語っていたこと、本当に恥ずかしく思います。
さて、この映画による学びは以下の通りです。
- 冬は寒くて眠れず、夏は暑くて眠れないのは本当に地獄
- 花を買うようなツラがある
- カーネーションと煙は、桃色に限る